今回は生成AI大本命のOpenAIが手掛けるPlaygroundで明細書の内容から新しい実施例をAIが生成できるのかを検証しました。開発者向けのツールということで、ChatGPTよりも設定をいじることができ、ChatGPTにはないinsert モードという機能があったので、これらをうまく使って実施例を大量生産できないかと思いましたが、甘かったようです。
まずインプットできるテキストの制限は以外に大きく、とても短いサンプル特許を見つけたにも関わらず、ごく一部の明細書のテキストしかインプットとして使えませんでした。そしてアウトプットも微妙なものしか出てきませんでした。クリエーティビティをいろいろと変えてみましたが、極端はものは使い物にならず、妥当なチューニングでも「使える新規の実施例」レベルのものは出てきませんでした。
しかし、今後インプットに使えるトークン数(文字数)が増え、明細書まるごとインプットデータとして用いることができ、さらにGPT4のようなマルチモーダルに対応してもらえれば、図面も参照してもらえるかもしれません。そうなると、かなりの精度で実施例を大量生産してもらえるのではないかと予想してます。
目次
前回はAIツールを使ってクレームから明細書を書いてみようとしました。ツールはコンテンツ生成に特化した生成AIでしたが、ブログやSNS向けのコンテンツを得意としたもので、特許明細書のような内容には不向きだったのか、明細書とは程遠いものがアウトプットされて使い物になりませんでした。しかし、部分的には評価できるところもあり、工夫次第ではちょっとした付加価値をつけることはできるかもしれないという結論に至りました。詳細はここに書いてあるので、よかったら見てください。
また、過去に行ったAIツールの知財活用の検証については、このページにまとめているので、興味のある方はぜひ。
今回の検証は実験的な観点で行われており、実際の業務に用いることを推奨しているものではありません。
特許に関する情報は機密情報が多いので生成AIを始めとしたツールを利用することは、機密情報の漏洩等のリスクを十分理解した上で使用することを強く勧めます。
今回の検証はすべて公開情報の基づいて行っています。しかし、実際の業務でAIを利用した明細書作成には機密情報を生成AIにインプットデータとして入力する可能性があります。そのような行為がどのような法的リスクを発生させるかは不透明で、特許法に関する「公開」にあたる可能性も示唆されているので気をつけてください。
また、実際の業務でAIツールを活用する場合、クライアントへの事前の許可や開示が必要になってくるかもしれません。特許事務所の方針やポリシー、各クライアントからの指示や今までの関係性、付き合いなどからも対応は変わってくると思いますが、業務への利用にはツールとして活用できるかという点以外にも様々なことを考慮する必要があることを理解してください。